聖徳会ポコ・ア・ポコの理学療法士の活かし方

理学療法士と聞くと、病院や介護施設などで、骨折の治療援助をしたり、高齢者の身体機能の低下を防ぐための取り組みをしたりするイメージでした。
しかし、病院や介護施設だけでなく、療育の現場でも理学療法士は活躍をしており、重要な役割を担っているんです!

理学療法士の仕事内容は?
中途障害のリハビリ、障害児のリハビリの違いとは?

■理学療法士の仕事内容は?
理学療法士とは、医師の指導の下でリハビリテーションに取り組む専門技術者で国家資格職です。
身体的な機能を熟知しており、動作の回復や悪化予防などを防いでくれます。

■中途障害のリハビリ、障害児のリハビリ、大きな違いとは?

●中途障害のリハビリ(運動発達獲得児(者)に対するリハビリ) 

日常生活を問題なく営まれてきたところに病気(脳卒中)やケガ(骨折)によって生活に支障が起こってしまった(中途障害)方に対し、元の生活が送れるように治療援助するリハビリです。

●障害児のリハビリ(運動発達未獲得児(者)に対するリハビリ)

出生後、何らかの理由で正常発達に支障がある乳幼児や児童に対し、適切な時期に適切なリハビリメニューを提供することで発達課題(寝返り、坐位、歩行、ジャンプ、スキップ、 鉄棒、縄跳び等)が獲得できるよう支援するリハビリです。

聖徳会の通所事業所、
ポコ・ア・ポコってどんなところ?

■ポコ・ア・ポコについて簡単にご紹介
聖徳会のポコ・ア・ポコは、2015年“ここでたのしむ!だんだんとそだつ!”をコンセプトに①放課後等デイサービスを開始しました。2018年に②児童発達支援、2023年に③保育所等訪問支援の指定を受け、障害児に対して総合的な支援をする多機能事業所となりました。

①放課後等デイサービス(就学開始~高卒まで)

放課後や長期休み中、支援を必要とする障害のある子どもに対して、学校や家庭とは異なる時間、空間、人、体験等を通じて、個々の子どもの状況に応じた発達支援を行うことにより、子どもの 最善の利益の保障と健全な育成を図ります。 

②児童発達支援(就学前までの乳幼児が対象) 

日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供しています。

③保育所等訪問支援                         

保育所等訪問支援の最大の目的は、担当する職員(訪問支援員)が保育所等を訪問することです。
訪問支援を通して、保護者様と保育所等の訪問先の距離が縮まるきっかけになります。
そして、お子さまの成長・発達を共に喜び合えるようになっていきます。
最終的にはお子さまが安心・安全に過ごせる環境になり、保育や教育の効果を最大限に引き出せるようになることが期待できます。

ポコ・ア・ポコに潜入!
理学療法士の取り組みを紹介!

①放課後等デイサービスでの取り組み

■Aさま(中学生)
今後の就労に向けて、個別ワークではボールペンの組み立てや解体の訓練をしているAさま。
手の振戦*が強いため、ボールペンの芯がなかなか入らず、やりにくさを感じているように見えました。
*振戦とは:意思とは無関係に生じる律動的な細かい振動運動(ふるえ)

【理学療法士からのアドバイス】

手の振戦を「重錘バンド」*で軽減することができれば、「装着すれば作業ができる!」につながります。
また、作業のみならず生活の中にも応用もされていけば、自信となり意欲にもつながっていくであろうと考えアドバイスをしました。
重さは作業の様子を見ながら決めていきました。
*重錘(じゅうすい)バンドとは:手首、足首などに巻きつけ下肢・腹背筋などに対する軽い抵抗運動に用いるバンドです。

【スタッフからのお話:重錘バンド使用後の様子】

重錘バンドを使用中は、手の震えが減少しました。
鉛筆や習字の練習でも使用し、○をなぞったり、ひらがなのお名前練習など、以前より習熟度が上がっていきました。

■Bさま(高校生)
食事の際にスプーンを上手に使用することが難しいBさま。
今までは普通のスプーンを使用していました。

【理学療法士からのアドバイス】

スプーンの使い方を観察し、柄の中指、環指に当たる部分を太くすることで食べやすくなると考察し、アドバイスをしました。

【スタッフからのお話:改良スプーン使用後の様子】

グリップがあるため、スプーンを口元に運びやすそうにしています。
また、身体機能ゆえの食べづらさもあったため、アドバイスのもと、どこまで支援すべきか明確になりました。
今まではスタッフの介助を待っていたところもありましたが、改良したスプーンを使用したことにより、自分で食べる意欲が高まっていきました。
完食することも増え、食事時間が短くなりました。

②児童発達支援事業での取り組み

■Cさま(3歳)普段は幼稚園に通園。週1日ポコ・ア・ポコに通所。
ハサミの使用が苦手なCさま。
両手でハサミを持ち、紙を切ろうとしていました。
持ちづらさから10分も集中が続きませんでした。

【理学療法士からのアドバイス】

児童発達支援の体験利用で保護者様からハサミが使えないとお話があり、確認しました。
ハサミを使用するための運動はほぼ獲得されているものの、把持しての運動との不一致から円滑に使えないと考察し、ハサミではなく棒を活用して遊び練習に入ることから始めました。
ハサミの持ち方が修正され使用できるようになりました。
この他にスプーンで口内にこぼすことなく運べるように、ペロペロキャンディを練習に使うよう保護者様にアドバイスしたところ次回利用日には改善されていました。

【スタッフからのお話:アドバイス後の成果】

ハサミの正しい持ち方を伝えると正しく持つことができました。
次の週になるとまた両手持ちになっていましたが、再度伝えるとすぐに直すことができました。
現在は直線切りができるようになり、10分以上集中し、ご自分からハサミの活動に取り組みたいと申し出がありました。

③保育所等訪問支援での取り組み

現在は幼稚園、こども園、保育園、小学校へ訪問しています。
今後、取り組みを行っていく予定です。

聖徳会の強み!
理学療法士が在籍していること!

ポコ・ア・ポコでは理学療法士が活躍をしています。
医学的、社会的観点から身体能力を評価する理学療法士だからこそ、スタッフが気付かなかったことに気づき、改善点の提案をしてくれています。
理学療法士のアドバイスにより、支援の幅も大きく広がりました。また、ご利用者自身「できた!」という自信につながり笑顔も増えています。

理学療法士は、障害児通所事業所のポコ・ア・ポコだけでなく、成人(障害者)の入所施設である見沼園や行田園にも週に数回出勤しており、ご利用者の様子を見ています。
リハビリ会議を実施して、理学療法士による勉強会を開いており、生活支援員のスキルアップにもつながっています。

生活支援員のみでなく、看護師や管理栄養士など、さまざまな職種の連携を大切に、ご利用者一人ひとりを支えています。
より楽しく、より暮らしやすい生活ができるように聖徳会は取り組んでいます!