

保育士資格と障害福祉サービスの融合
近年、保育士資格と障害福祉サービスの融合が注目されています。子どもたちの成長を支えるためには、多様なニーズに応える専門的なスキルが求められています。この二つの分野が連携することで、どのような効果が期待できるのでしょうか?
私(筆者)自身、保育士養成短期大学を卒業時、保育士資格を取得しました。社会福祉法人聖徳会の障害者支援施設(見沼園)で成人を対象とする生活支援員を5年経験し、現在は放課後等デイサービス・児童発達支援事業所(ポコ・ア・ポコ)に異動しました。
この経験を踏まえてきたからこそ、保育士資格と障害福祉サービスの重要性についてお伝えいたします!
保育士の役割とスキル
保育士は、幼児の成長と発達を支援する専門家です。子どもたちの基本的な生活習慣の指導や社会性の育成、情緒の安定を図る役割を担っています。
子どもたちに対する「コミュニケーション力」、「観察力」、「柔軟性や適応力」などは保育士に求められるスキルです。このスキルは、障害を持つ子どもたちに対してより重要になります。
放課後等デイサービスや児童発達支援を利用中のお子さまは個性的で十人十色!楽しく登所するお子さまもいる反面、学校や保育所の嫌な出来事を引きずってくるお子さまも。
そのようなお子さまに対しては無理にプログラムを実施せず、傾聴したり、一緒に折り紙を折ったり柔軟に対応します。
ポコ・ア・ポコではご利用いただく前に体験利用ができます。
ご家族から体験前に情報をいただきますが、体験利用のお子さまはどの職員も初めてになります。
保育士の特徴を活かしているのは、実際に行った次のような場面かもしれません。
体験利用導入時にご家族からお引き受けした後、荷物の整理、ワークシート記入を促し、おやつを提供いたします。
この機会にコミュニケーションをとることで、お子さまの反応を観察。好きなキャラクターやマイブーム、好きなこと嫌いなこと、得意なこと苦手なこと、集団が苦手ではないか、など情報収集します。
この情報をもとに、次のレクリエーション活動の取り組み内容を検討します。
例えば、当初「長縄くぐり」で計画していたものを「長縄跳び」に変更。
創作的活動では、お絵かきの題材として、先に確認していた好きなゲームキャラクターを描いていただくなど、ズムーズで楽しく体験できるように支援します。
障害福祉サービスの重要性
障害福祉サービスは、障害を持つ人々が自立した生活を送れるようサポートすることを目的としています。
障害をもつ子どもたちに対しては、個々の持つ障害特性や発達段階に応じた支援が必要です。
障害福祉サービスは、子どもたちの成長にあわせ、サービス内容を変更しながら長期的なかかわりを行います。
児童発達支援(未就学児)⇒放課後等デイサービス(小校入学~高校卒業まで)⇒成人用障害福祉サービスといったように、継続的な支援を受けることが可能です。
ポコ・ア・ポコでは年長のお子さまに対し、児童発達支援を週1回以上利用することで事業所の環境に慣れていただき、小学校入学後の本格利用をおすすめしてきました。
その理由は、小学校入学と同時に放課後等デイサービスを利用開始したお子さまは2つの新しい環境に慣れる必要に迫られます。これはかなりしんどいことで、せめて、事業所だけでも先行して慣れていただき、安心して小学校入学後の新生活を迎えてほしいためです。
また、ご縁があり、小学生時代から高校卒業まで放課後等デイサービスをご利用いただくことも少なくありません。
高校生になると卒業後の進路先として、就労支援継続B型事業所を選択し障害福祉サービスを継続利用している方もいます。

ポコ・ア・ポコ 交通体験

ポコ・ア・ポコ AGF工場見学

ポコ・ア・ポコ 街探検
融合のメリット
保育士目線から見た障害福祉サービスとの融合のメリットには、以下の点があげられます。
■適切な支援:
保育士が障害福祉の知識を持つことで、保育士の特徴であるコミュニケーション力や観察力などが、障害のある方の「何をしたいか」「どんな気持ちか」をとらえ寄り添うことで、より適切な支援ができます。
■早期発見と介入:
保育士は子どもたちと接する機会が多いため、発達の気になる点(発語、表情、体の動きなど)を早期に発見し、適切な支援や早期療育につながります。
■家族へのサポート:
保育士が障害福祉について理解を深めることで、ご家族へのアドバイスや情報提供がより的確になります。

ポコ・ア・ポコ ファミレスガスト社会体験

ポコ・ア・ポコ 交通体験
実践の場
「グレーゾーン」と呼ばれる診断が明確でない子どもたちは、配慮が必要であるものの、障害が明確でないため、適切な支援を受けられず悩む場面が多く見られます。
「発語がやや遅れているが、言葉の理解はできている」や「教室での集団になじめず園庭(校庭)に逃避してしまう」など。
保育士や教育関係者が「グレーゾーン」に早期に気づくことで、ご家族を中心に医療や行政と情報連携するきっかけになることもしばしば。
情報連携の結果、診断を受け、早期療育により発語が増えたケースや、徐々に集団になじめるケースもあり、お子さまの成長を促進することにつながりました!

今後の展望
ポコ・ア・ポコは、私を含め職員の4割が保育士。
年齢、発達段階、思春期や、お子さまの個性に違いがあるため、支援内容もひとり一人カスタマイズしています。
長縄では「大波を連続10回跳ぶ」ことを目標にしているお子さまもいれば、「止まっている縄をまたぐこと」を目標にがんばるお子さまも。
また、書字では「鉛筆の持つこと」から「線を引くこと」に変わり、「〇を書くこと」・・・と成長に合わせ課題も違ってきます。子どもたちの成長とともに支援内容も変わっていきますが、成人になったとしても保育士のコミュニケーション力や観察力を活かすことで、ひとり一人に適切でより良い支援ができると信じています!

まとめ
私たち保育士は現状に満足せず、自身の課題に取組みスキルアップすることが重要と考えています。
職員の支援が、お子さまの成長に影響することを意識しなければなりません。
また、様々な機関・職種と連携することや、お子さまにとって一番大切な存在のご家族と密に情報共有し、ともに歩む姿勢が重要になります。
保育士の特徴を活かし障害福祉サービスと融合することで、子どもたちが安心できる環境のもと、より良い支援を受けることができるよう努力しています。
将来、どんな大人に成長するかを楽しみに支援していきたいです!!