相談支援専門員ってどんな仕事?― 利用者に寄り添う“縁の下の力持ち”のリアル

「福祉の仕事」と聞いて、あなたはどんな仕事を思い浮かべますか?
介護職員やヘルパー、看護師、作業療法士…きっと、直接的に“支援する人”をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、福祉の現場には、利用者一人ひとりの「こう暮らしたい」を実現するため、裏側で支援の仕組みを整え、制度や人、サービスをつなぐ“縁の下の力持ち”がいます。
それが、「相談支援専門員(そうだんしえんせんもんいん)」という仕事です。
今回は、相談支援専門員として働く私の視点から、この仕事のリアルとやりがいについてお伝えします。

✨相談支援専門員とは?

相談支援専門員は、障害のある方やご家族が地域で安心して暮らせるよう支える「相談窓口」です。
生活の悩みや将来の希望に寄り添いながら、必要なサービスの計画を立てたり、サービス事業所や医療機関、学校や行政機関などと連携して暮らしやすい環境を整えます。
言い換えれば、「その人らしい生活を一緒に考えるパートナー」であり、「制度やサービスを上手に活かす調整役」でもあります。障害福祉版のケアマネジャーともいえます。

私は相談支援専門員になる前は、入所施設(障害者支援施設)で生活支援員として、障害のある方の身の回りの支援をする直接処遇の業務をしていました。
しかし、働く中で制度やサービスの複雑さを知り、障害のあるご本人や家族だけでは使いこなすのが難しいのではないかと感じていました。
だからこそ、橋渡し役として、「こんなふうに暮らしたい」を形にするお手伝いをしたい――その思いが相談支援専門員を目指すきっかけになりました。

✨相談支援専門員になりたい!

相談支援専門員になるには、法定研修の修了が要件です。
法定研修を受講するためには現場の実務経験が必要で、介護福祉士や社会福祉士などの福祉系国家資格、医師、看護師、理学療法士などの医療系資格取得者は5年、資格未取得者の場合は10年の実務経験となっています。

やや敷居が高く感じられたかもしれませんが、令和6年4月に「相談支援員(そうだんしえんいん)」が新設され、社会福祉士や精神保健福祉士の資格があれば、現場実務未経験者でも相談支援業務の一部が行えるようになりました。現状はまだ相談支援員が知られていないこともあり求人は多くはありませんが、相談支援業務の入り口として広まっていくことが期待されます。

✨ある一日の仕事の流れ

相談支援専門員の一日は、日によってまったく異なりますが、ある日を例にするとこんな感じです。

9:30 出勤・メールチェック
行政からの連絡、サービス事業所との調整メールなどを確認。
訪問予定や書類作成の段取りを整理します。

10:00 ご自宅訪問(アセスメント)
新たにサービス利用を希望される方のお宅を訪問。
障害の状況や日常生活の様子、ご家族の不安などを丁寧に伺います。
「体調に心配があるけれど、就職に向けてがんばりたい」、「ヘルパーさんを増やせたら安心」など、生活のリアルな声が聞こえてきます。

12:30 昼休憩(でも電話対応が入ることも…)
電話での相談や緊急対応が入ることも少なくありません。
柔軟に対応しつつ、気持ちもリセット。

13:30 サービス事業所との連絡調整
ご利用者に合ったサービス提供のため、事業所と連携。
本人の希望、支援内容、スケジュールなどを確認し、具体的な調整を行います。

15:00 サービス担当者会議への出席
医療・教育・福祉などの関係機関と情報を共有し、支援の方向性を話し合う場。
時には意見のすれ違いもありますが、「誰のための支援か」を軸にして議論を深めます。
会場はご利用者の自宅や利用先のサービス事業所になることが多いですが、病院や役所で行うこともあります。
多いときには10名以上の関係者が集まることもあります!

16:30 サービス事業所訪問(モニタリング
ご利用者の活動時の様子を見学したり、支援目標の達成度評価のため、利用している事業所を実際に訪問します。
ご本人や事業所担当者と意見交換しながら、サービスの実施状況を確認します。
複数のサービスや事業所を利用している方の場合は、訪問で得た情報を各事業所担当者に共有することも役割のひとつです。

17:30 計画作成・記録整理
訪問や会議の内容をもとに、「サービス等利用計画(案)」を作成。
どんな支援を、どの事業所で、どれくらいの頻度で利用するのかをまとめ、役所に提出します。

18:30 退勤(今日も無事定時で!)
支援の進捗を同僚と共有し、明日の予定を確認して退勤。
ふと振り返ると、今日も誰かのしあわせに関われた、充実した一日だったと実感します。

✨この仕事のやりがいと難しさ

相談支援専門員の仕事の特徴は、「正解がひとつではない」ということ。
そのため、かなり難しい!
でも、だからこそ深くやりがいがあります!!

精神疾患のある50代の女性は、「グループホームを変えたいって言ったらみんなから否定されてしまったけど、○○さん(私のこと)は、話をちゃんと聞いてくれた。○○さんが紹介してくれたグループホームに移ったら前よりも自分らしいん暮らしができるようになった」とおっしゃってくださいました。少しだけ信頼関係が深まったかな、と感じた瞬間でした。
実はこの方、前のグループホームではお隣の部屋の入居者さんから厳しいことを言われ、どう関わっていいのかずっと悩んでいたのに、なかなか言い出せなかったそうです。勇気を出して言ったのに否定されたら誰でも悲しい気持ちになってしまいますよね。支援を通して対人関係の悩みを解決できたと同時に、立地の良いグループホームに移り住んだことで「気軽にコンビニで買い物したい!」という希望が実現でき、会う度に元気さを取り戻しています!


また、身体障害のある50代男性は、私が作った計画書の説明を聞き、「そうそう、あのときはうまく伝えられなかったけど、そういうことが言いたかったんだよ!ちゃんと俺のことをわかってくれてうれしいよ」とおっしゃってくだいました。病気や事故の影響で言葉がスムースに出なくなってしまい、コミュニケーションにもどかしさを抱えていらっしゃったそうです。ご本人の思いを汲み取ることができ、それを形にすることができた喜びと充実感を味わえました。
この方とはもう10年近いお付き合いになりますが、これまでご本人は何よりもリハビリに力を入れてきました。その成果が表れ、少しずつ上手に言葉が出るようになりました。今ではコミュニケーションに自信がついてきたようで、新たに「就労継続支援B型事業所」に通いはじめ、仕事や仲間との交流を楽しんでいます。そして、「いつか一般就労できたらいいなあ」と次のステップアップを見据えています!
困難を抱えながらもがんばっているご本人の姿を目の当たりにして、すてきな未来をご本人と一緒に考えていけたらなと、いつもお会いするのが楽しみです!


ご利用者から温かい言葉をかけていただいたときは、たくさん悩みながら計画書を作ったり、多くの関係者と連絡を取り合った苦労が報われますし、やりがいを実感することができます。
もちろん、うまくいかないことも残念ながら度々あります。
ですが、たとえどんなに時間がかかろうとも、目の前の人が望む暮らしを一緒に思い描き、一歩一歩近づいていけるよう支援を重ねることが、私たちの相談支援専門員の使命です。

✨相談支援専門員という選択肢

福祉の仕事に関心をお持ちの方でも、「相談支援専門員」という職種はあまり知られていないかもしれません。
障害福祉サービス自体が世間一般からするとマイナーであり、その中のちょっと変わった職種であるので無理もありません。

けれども実は、この仕事は日々の生活に生きづらさを抱えるご利用者の夢や希望を実現し、その人らしい人生を送るお手伝いをする、とてもクリエイティブな仕事なのです。
いわば、一緒に人生のストーリーを描いていく伴走者のような存在です。

この仕事の特徴の一つは、多様なバックグラウンドが活かせることです。
地域には、私のように障害福祉分野の入所施設や通所事業所で現場経験を積み、相談支援専門員として働く仲間がたくさんいます。他には、病院等の医療機関や高齢福祉分野で介護の経験を持つ方はもちろん、学校教育や臨床心理等の福祉業界以外から転職して活躍している方も数多くいます。
「コーディネートが上手な人」や「フットワークが軽い人」はもちろん、「人と関わることが好き」、「聞き上手と言われる」といった人も、きっと相談支援の仕事に自分の強みを活かすことができるでしょう。

そしてこの仕事で何より大切なのは、ご利用者一人ひとりの「こんなふうに暮らしたい」という想いを尊重し、その実現に寄り添う姿勢です。
そのプロセスを通して、支援する側である私たち自身も多くの気づきや成長を得ることができます。人の人生に関わりながら、自分の人生にも深みが増していく――そんな経験ができるのも、この仕事ならではの魅力です。

「誰かの力になりたい」
「社会に必要とされる仕事をしたい」
「福祉の現場で自分の力を試してみたい」

そう思った方は、ぜひ一度、私たちの職場(見沼園あんしん相談室)をのぞいてみてください。

相談支援専門員というお仕事をしっていただく機会の提供として、社会福祉士の資格取得を目指す方の「ソーシャルワーク実習」も積極的に受け入れています。
社会人学生さんは集中日程での実習が難しいこともあり、ご都合にあわせた分散日程でも実習をお受けしています。

現場でしか味わえない“リアル”な魅力を、あなた自身の目で確かめに来てください!