

「福祉=高齢者」だと思っていた私が、障害福祉で見つけたやりがい
私が社会人になりたての頃、福祉といえば「高齢者」というイメージが強く、「障害」分野にはほとんど触れたことがありませんでした。
私の場合、「たまたま希望していた条件と合ったから」。そんな理由で就職して始めたお仕事が、今では自分のキャリアの中心になりました。
この記事では、どうして障害福祉に魅力を感じるようになったのか、その過程を振り返ってみたいと思います。
🌺週2日から始まった、もうひとつの現場
大学卒業後に福祉の仕事を始めた当初、私は有料老人ホームで介護職として働いていました。高齢のご利用者との関わりで多くの学びとやりがいを感じていたものの、同じルーティンが続く中で「他の分野も知ってみたい」と思うようになっていました。
そんな思いもあって、社会福祉士の資格取得を目指し、通信制の専門学校に通い始めました。四大卒ですが専攻が福祉系でなかったため、受験資格を取るためには、私の場合は実習が必須であったために1か月ほど仕事をお休みすることに。せっかくのタイミングだし、新しい分野を経験してみるのもいいかなと思い、ゆるやかに転職活動を始めることにしました。
ちょうどその頃、社会福祉法人聖徳会が運営する障害者グループホームの「グループホーム ルーチェ」の求人を見つけ、自宅から通いやすくシフトの条件も合ったため、兼務という形で勤務をスタート。最初は週2〜3日、まったく勝手の違う現場に戸惑いながらも、少しずつ「この仕事、面白いかもしれない」と思うようになっていきました。

🌺異なる世界に触れて
高齢者介護の現場で働いていた頃、ご利用者に対してはどこか「お客様」という意識で、一線を引いて接していた自分がいました。長い人生を歩んでこられた方々に対して、丁寧に敬語を使い、支える側と支えられる側という距離感が自然にあったのです。しかし、「ルーチェ」での仕事を始めてから、その感覚が大きく変わりました。
入職してすぐに感じたのは、ご利用者がリラックスしており、職員と対等に接し合い、まるで家族や仲間のように暮らしていることでした。
夕食後リビングで過ごしていたご利用者が「これ教えて」と漢字ドリルを持って来たとき、ある職員は「先に歯を磨いて、、、その後一緒にやりましょうか!」と表情や動きにユーモアを交え、明るく返答していました。ご利用者は「え~」と言いながらも、ゆっくり洗面台に向かい、歯磨きを終えてから職員と漢字の勉強を始めます。
当時の私は「仲良く楽しそうな雰囲気だな」くらいにしか思っていませんでしたが、実はこの方、取りかかるのに時間がかかるタイプで、声かけによる促しが必要だったのです。
「漢字ドリルをやりたい」という気持ちが先行して、他の日課を後回しにしがち。それを無理なく促すために、職員は歯磨きを“嫌なこと”にしないよう、楽しい空気をつくっていたのだと後から気づきました。
支援の中にある配慮と工夫は、一見気づかないほど自然で、面白さを感じます。
日々のやり取りの中で、お互いに心を許し合う関係が少しずつ見えてきて、「ともに暮らす仲間」として支援するとはこういうことなのかと、身をもって感じることができました。

🌺教科書ではわからなかった、現場の奥深さ
また、希望のシフトに入れない日は、もう少し勤務したいことを管理者に伝えると、同じ法人が運営する障害者支援施設「見沼園」や放課後等デイサービス「ポコ・ア・ポコ」でも勤務できるように配慮してもらえました。
そこで感じたのは、障害福祉の対象者の幅広さと、支援の多様さ奥深さです。
対象者が成人か、児童か。
それだけでも関わり方が変わってくるのはきっと皆さまも想像していただけると思います。


知的障害・身体障害・精神障害、発達障害、年齢や生活歴、どれを取っても一人ひとりがまったく違う背景とニーズを持っています。
それにより困りごとも支援目標も異なる。
その奥深さとおもしろさは、教科書の中だけでは知り得なかった“現場”だからこそ学べたことでした。
途中コロナ禍時代があり、感染防止として事業所間兼務は控える方針を法人が取ったため、グループホームでの勤務に集中させてもらえることとなりました。
その後、無事に社会福祉士にも合格し、その資格を活かせる仕事として相談支援事業のメンバーに就きたい、そしてパート職から正社員に転換したいと管理者に宣言!
転換試験にも合格したことで、法人内で複数の事業所での勤務を経て、今では「見沼園」で正社員として働いています。ここが私にとっての“居場所”になっていたのです。

🌺おわりに
はじめは「たまたま希望していた条件と合ったから」というだけのきっかけで障害福祉のお仕事を始めたわけですが、気づけば自分の中で「ここにいたい」「もっと関わっていたい」という思いが育っていました。
そんな中で、福祉のサービスや支援について「障害があるからこうするしかないんだ」「どうしたらいいのか分からない」と悩む人たちが多いのではないか?と思うようになりました。
それは、自分(=私)だって働くまでは障害福祉の支援がこんなにたくさんあることを知らなかったから。
その方たちの選択肢を広げるお手伝いがしたいーーーそんな思いをもって、現在は相談員として日夜奮闘しています。
相談員としての役割は、単に制度の案内にとどまらず、利用者やその家族が抱える課題を多角的に捉え、一人ひとりのニーズに応じた計画の作成や関係機関との連携を図ることにあります。
まだまだ力不足を感じていますが、それでも私はこの仕事に誇りを持っています。障害のある方やそのご家族の可能性に寄り添い、ともに歩んでいくことに大きなやりがいを感じています。
障害福祉の仕事に就いたことで、私の中で見える景色が少しずつ変わってきました。
街を歩いていても、これまで目に入らなかった福祉サービス事業所の看板に気づくようになりました。大きく掲げられているものもあれば、静かに佇むような建物もあります。
「こんなにも支援の場があるんだ」と、改めて気づかされます。
この仕事を通じて、私自身が多くの気づきや学びを得てきました。だからこそ、大切に続けていきたいと思っています。
もし障害福祉の世界に興味があれば、ぜひ一度、聖徳会ものぞいてみてください。きっと新しい発見があると思います。