「助けて!」と言える街づくり              ――行田市における社会福祉法人の連携の輪

「ちょっと生活が苦しい」、「仕事を失って先が不安」、「近所に頼れる人がいない」――。
誰もが、そんな「困りごと」を抱える可能性があります。
けれども、いざ助けを求めようとすると、「迷惑をかけてしまうのでは」、「どこに相談したらいいかわからない」と感じてしまう人も少なくありません。

私たち社会福祉法人は、そんな方々に“声を上げられる安心”を届けたいと考えています。
行田市では今、複数の社会福祉法人が連携し、地域に住むすべての人が「助けて!」と言える環境づくりに取り組んでいます。
それを支えているのが、埼玉県が進める「彩の国あんしんセーフティネット事業」です。
今回はこの「彩の国あんしんセーフティネット事業」にスポットを当て、当法人の活動をご紹介します。

社会福祉法人に求められる「地域への貢献」

私たち聖徳会は、1987年の法人設立以来、障害者支援に携わってきました。
現在も主な事業は入所施設(障害者支援施設)やグループホーム、障害児を対象とした放課後等デイサービスなどがあり、障害のある方々を支援する事業が中心であることに変わりはありません。
しかし、30年以上事業を続ける中で、日本における社会情勢は大きく変わってきました。
少子高齢化に伴う介護の問題、いわゆる「8050問題」*と言われる家庭への支援、貧困問題といった話題がクローズアップされるようになり、社会のニーズは多様化・複雑化していると言われています。
*「8050問題」とは、80代の親が50代の子どもを支え、経済的・社会的に困窮する家族の問題を指します。

一方、社会福祉事業を行う社会福祉法人に関して、2016年の社会福祉法改正により社会福祉法人制度改革が行われ、「地域における公益的な取組(社会貢献活動)」が社会福祉法人の責務として位置づけられました。
これは、既存制度以外の福祉課題に視野を広げる機会となり、当法人においても施設の中で完結する支援から一歩踏み出し、「地域社会全体を支える存在へ」と法人の役割を拡大する転換期となりました。

この社会福祉法人制度改革をきっかけに、埼玉県では埼玉県社会福祉法人社会貢献活動推進協議会が設立され、「彩の国あんしんセーフティネット事業」が始まりました。
この事業では、県内の当該事業に参画する社会福祉法人がエリア毎にネットワークを組み、生活困窮者や社会的孤立のリスクを抱える人を支援しています。

「彩の国あんしんセーフティネット事業」とは

「彩の国あんしんセーフティネット事業」は、この事業に賛同した埼玉県内の社会福祉法人が協働し、地域の「セーフティネット」として機能することを目的としています。
既存の制度だけでは支えきれない「制度の狭間」にある生活課題を、法人が持つ専門性と地域資源を活かして支援するものです。
事業に参画する社会福祉法人からの社会貢献活動費(年会費)により基金を設立し、社会福祉施設、社会福祉協議会、関係団体等と連携・協働しながら相談支援現物給付を行います。

具体的な活動内容は、
・生活困窮者への相談・支援
・食料や子どもの衣料品、生活用品の提供
・仕事の体験機会の提供
といった、その人の実情(=お困りごと)に応じた取組みを進めています。

この事業の特徴は、単に食料や生活用品などを現物給付するだけでなく、実際に相談者の住まいに「行って」、生活状況を「見て」、相談者のお話を「聞いて」相談支援を行う点にあります。
実際に相談者の住まいを訪問してみると、事前に伺っている相談内容の他にも緊急で対応しなければならない課題が見つかる場合があります。また、利用できる制度を相談者の方が知らず、情報提供をすることでご自身で課題を解決できる場合など状況は様々です。
課題が解決した後も就労支援の紹介、医療機関や専門機関への橋渡しなど、さまざまな形で暮らしの安定を支えています。いわば「伴奏型の支援」であることが大きな特徴です。

対応する職員は、普段は施設の介護職員や保育所の保育士、ケアマネジャーや相談支援専門員など各法人の業務に従事する職員が「担当相談員」となって対応します。
私たち聖徳会では、見沼園あんしん相談室に勤務する相談支援専門員が「担当相談員」として対応します。
※「担当相談員」は、「彩の国あんしんセーフティネット事業担当相談員養成研修」を修了した職員です。

また、県内を4つのブロックに分け、ブロックごとの拠点施設に「社会貢献支援員」が配置されます。
この「社会貢献支援員」と各会員施設の「担当相談員」が連携し相談支援を提供します。

「社会貢献支援員」と「担当相談員」の役割

「社会貢献支援員」…関係機関の専門職と連携し、担当相談員のサポート役として助言を行うとともに、事業の周知活動、事例検討会など研修の企画・運営を行います。

「担当相談員」…相談者の所得や生活状況、生活上の課題を把握するため、相談者の自宅を訪問します。また、社会貢献支援員や市町村社会福祉協議会と協力し、地域のネットワークを活かした支援を行います。

相談に訪れる方の背景は実にさまざまです。
 ・仕事を失い、今日明日の食べ物もない
 ・親の介護で離職してしまい、親を看取ったもののその後の生活が立ち行かなくなった
 ・自分の病気のため家を出られない
 ・収入が途絶え、アパートの退去をせまられている ――
一人ひとりに異なる事情があり、支援の形も一様ではありません。

これまでの支援にはこのようなものがありました。

60歳代のAさん(男性)のケース
Aさんは、両親の介護のため、長年勤めた会社を退職しました。
長い介護生活の間、両親の年金収入を頼りに生活しましたが、その両親が相次いで他界。Aさんは無収入となりました。私が担当相談員として初めてお会いしたとき、所持金はほとんどありませんでした。「家族が亡くなり気持ちが折れてしまいました。働かなければ生活できないことはわかっていますが、気力がありません」と話していました。
社会福祉協議会の職員や社会貢献支援員と連携し、食料の援助(現物給付)をしながら生活の立て直しを図るための話し合いを重ねました。
生活福祉資金の貸付申請や就職活動のサポートを行っていく中で、Aさんの気持ちも徐々に前向きになっていく様子がわかりました。
Aさんとの会話では、これまで誰にも頼れず一人で両親を支えてきたこと、「彩の国あんしんセーフティネット事業」の支援を受けるようになり地域とのつながりを感じられるようになったことなど、いろいろな思いをお話いただくことができました。
そんな中、市内の企業に就職が決まり、今後の生活の見通しが立ちました。
私たち支援者は初回の給料を受け取るまで見守り、無事に生活を立て直すことができました。

30歳代のBさん(女性)のケース
市内のアパートで高齢の母と、幼稚園に通う娘の3人で暮らすBさんは、病気を患い、受診や服薬をしながらなんとか仕事を続けていました。
しかし、浪費傾向があり、毎月の給料以上にお金を使っていました。
また、家賃、電気料金、ガス料金の滞納も続き、生活が立ち行かなくなっていました。
Bさんに対しては、浪費をしないための金銭管理のサポートや滞納している料金の返済計画を立て、確実に返済できるように支払い時には同行するなどの支援を行いました。
返済先が複数あったこともあり、連携した関係機関も多岐にわたりました。
家賃の返済計画の相談にのってもらうため、不動産会社にも加わってもらったり、電気会社、ガス会社に分割払いの交渉をしたりといった支援も行いました。
支援の結果、Bさんは金銭管理が上手になり、「自分一人でもできそう」と自信がついたと話していました。
無事に滞納料金も支払い終え、家族での安定した生活を手に入れることができました。

このような支援を通して、「話を聴く」「つなぐ」「見守る」――その積み重ねが、地域のあんしんを生み出していると感じます。

行田市の取組み -法人の壁を越えた連携-

行田市では、行田市社会福祉協議会が中心となり、そこに複数の社会福祉法人が分野を超えて連携する仕組みが動いています。
高齢、障害、児童など、それぞれの専門性を持つ法人が情報を共有し、支援の連携を図っています。
一つの法人だけでは対応しきれない課題も、ネットワークの力によって解決への道が開けるのです。
定期的に行われる法人間の会議では、地域の課題を共有しながら、新しい支援の形を模索しています。
この「連携の輪」は、支援を受ける人だけでなく、支援する側の職員にも大きな学びと刺激を与えています。
互いの強みを認め合いながら、より良い支援をつくり出していく――それが、この事業のもう一つの価値でもあります。
なお、この「彩の国あんしんセーフティネット事業」に参画していない法人も、独自の食料支援や相談支援など「地域における公益的な取組」を行っています。
提供しているサービスの種別や事業内容に関わらず、同じ社会福祉法人として、地域の方々が安心して暮らせるネットワークをこれからも大切にしていきたいと考えています。

「助けて」と言える街を未来へつなぐ

私たち、社会福祉法人聖徳会の経営理念は「今を助け、未来を拓く」です。
「彩の国あんしんセーフティネット」は、まさに私たちの法人の理念を体現するような活動です。

社会の変化が激しくなる中で、孤立や貧困、家庭問題など、生活の不安を抱える人は増えています。
こうした課題に対して、私たち社会福祉法人が果たす役割はますます重要になっています。

「助けて」と言えることは、弱さではなく“勇気”です。
そして、その声を受け止められる地域があることこそが、本当の“安心”なのだと思います。
私たちは、地域の一人ひとりが安心して暮らせるよう、これからも法人間のつながりを大切にしながら、支援の輪を広げていきます。

福祉の仕事は、人と人とのつながりを実感できる仕事です。
誰かの生活を支えることは、自分自身の成長にもつながります。

「困ったときに、助けてと言える」
そんな当たり前の安心を、地域のみんなでつくっていく――
それが、私たちの目指す“あんしんの街”の姿です。

今回、聖徳会ではこのような活動も行っていることを皆さんに知っていただきたいと思い記事にしました。
「彩の国あんしんセーフティネット事業」のホームページもありますので、ぜひご覧になってみてくださいね!

https://safety.fukushi-saitama.or.jp/